オザレポ
いつも松本山雅FCへご声援頂きありがとうございます。
『ズク』がなくて書けずにいたオザレポですが久しぶりに書いてみました。
いつも長い!と言われるのですが、今回もそこそこ長くなっていますのでお時間ある時にご覧いただければと思います。
2018年9月11日。
喫茶山雅に新しいスタッフが加わりました。
『阿部琢久哉』
知っている方も多いかもしれませんが2008年から2012年まで山雅でプレーし、地域リーグからJ2に駆け上がった松本山雅FCの原動力となった元選手です。
今まで店舗マネージャーを務めていた若松が寿退社をすることになり後任を探している中で、今年、サッカー選手を引退しフィットネスの事業で新たな挑戦をしていた阿部琢久哉に白羽の矢がたち、喫茶山雅のスタッフとして松本に戻ってきてもらうことになりました。
なぜ彼だったのか。
理由はいくつかあるのですが、やはり一番は現役時代のサッカーに対する取り組む姿勢。
残念ながら怪我に泣かされることが多かった現役時代でしたが、常に前向きにリハビリやトレーニングに取り組む姿勢を見てきたので、今回の新しいチャレンジにも必ず前向きに取り組んでくれるだろうと思ったのが一番の決め手になりました。
実際に彼の前向きな姿勢と明るいキャラクターは必ず喫茶山雅事業にとっても大きな補強になると信じています。
今回のことは自分の中でも大きなチャレンジです。
喫茶事業を立ち上げる時に自分の中でいくつかの目標を掲げました。
その1つが、
『いつかこのクラブの為に尽力してくれた選手を招けるように少しでもクラブでの仕事の枠を拡げること』
その『いつか』のはじめの一歩が今回だったのです。
これから続いていく誰かの為にも今、ここにいる自分たちが一社会人として周りからしっかりと認めてもらえるように取り組んでいかなければならない。
彼を迎え入れた今、改めてそんな想いを強く抱いています。
さて、2017年2月25日に喫茶山雅が開店し、早いものでもう1年半以上が経過しました。
嵐のように駆け抜けてきて、よくここまで来れたなというのが正直な感想です。
お店に来て喜んでくれている方の姿を見て、チャレンジしてみて良かったなと思う瞬間もありますが、この1年半を振り返るとやはり飲食店を経営することの難しさに直面することの方がはるかに多かったような気がしています。
でも、そんな時にいつも考えることは、そういう成功体験も、失敗談も、嬉しさも、悔しさも、苦労も、すべてはクラブの成長に繋がっているということです。
本当にかけがえのない経験をさせてもらっているなといつも感じながら仕事をさせてもらってます。
これまで有り難いことに沢山の角度から松本山雅を、サッカークラブを見させてもらってきました。
選手として。
アカデミースタッフとして。
広報として。
営業として。
そして、喫茶山雅事業に携わる者として。
この全ての経験というのは確実に自分の中に財産として残っていますし、様々な角度から物事を見る大切さに気づくことが出来ました。
見える角度が変わるということは、同じものを見ても見え方や感じ方が変わるということ。
例えば、
喫茶山雅があるみどり町に『辰巳の庭』という水が流れているスペースがあるのをご存知でしょうか?
ここは喫茶山雅を復活させることが決まってから幾度となく通っていました。
何となくいつも綺麗だし松本らしくていい場所だなと。
でも、正直、その風景やあそこにそのスペースがあることについてあまり深く考えたことはなく、ただ漠然と捉えていただけ。
何となく、趣のある場所だなくらいにしか思っていませんでした。
でも、喫茶山雅としてあの場所に店を構え、町会に入り地域の活動に参加していく中で辰巳の庭や女鳥羽川は町内会の方たちが定期的にいつも掃除をしてくれていることを知りました。
すると不思議ですね。
何気なく街を歩いている時、あぁ今日も街がきれいだなって思うようになるんです。
これは自分で体験しないと絶対にわからないこと。
長靴を履いてゴミを拾い、詰まっているドロを掻き出し、ブラシで苔をこすり落として水を綺麗に循環させる。
時間と労力を割いて動いてくれている人たちがいる。
そのプロセスを知ったからこそ、
どこを歩いていても、どんな場所にいても、そこには必ず見えないところで動いてくれている人たちがいるという景色が頭の中に浮かぶようになる。
アルウィンにも同じことが言えますよね。
恒例の「日本一気持ちのいいスタジアム大作戦!」が本日開催されました。
今日も朝から皆さんが一所懸命、綺麗にしてくれていて、ある方は階段の間に生えている苔まで全部綺麗にとってくれていました。
最後に「大変だからここまでしなくてもいいって言ったんだけどね」と言いながら、言葉とは裏腹にちっとも嫌そうじゃなくその苔をまとめて片づけるサポーターの方の姿を見て、多分、次からあの階段を歩く時は必ずその姿を思い出すだろうなと思いました。
こういう姿を沢山の方が知っているからこそアルウィンのあのゴミのない綺麗な環境が保たれているし、アウェーに行っても帰る時には観客席にゴミが一つも落ちていない!と対戦相手のクラブ関係者が驚いて報告をしてきてくれるのでしょうね。
あぁ、今日も綺麗だなって。
目に見える景色だけではなく、その裏にある物語が見えると心からそう思えるようになる。
そして最近、ある講演を聴講した際にその「物語」を感じる為のヒントをもらいました。
それは、
「見る」と「よく見る」の違いです。
例えば、目の前に何の変哲もない普通の1本の木があるとします。
それをただ漠然と「見る」だけだと、おそらくそこらへんでよく見る木にしか見えませんよね。
では、その木を「よく見る」ようにしてください。
そう言われ時、皆さんだったらどうしますか?
おそらく近くに寄っていって見る方が多いと思います。
葉っぱが沢山生えていて、もしかしたら花も咲いていて、実もなっているかもしれません。
実際に触れてみて木のぬくもりを感じて、耳を当てて樹木の中で水が流れる音を聞いてみるかもしれません。
確かにそれもよく見る、ということには違いありません。
ただし、そうすることでスケッチブックには上手に描けるようになるかもしれませんが、それは「よく観察する」であってここで言う「よく見る」とは違うと言うのです。
「よく見る」
それは、目の前にあるモノを見る時に、そこに「時間軸」を加えて見ることだと言います。
ここまで大きくなるのにかけてきた時間や、それを育ててくれた人たちの労力、そういった目に見えないものを想像する。
つまり、時間軸を加える事で目の前にあるモノの「物語」を感じられるようになる。
なるほど。
私は松本山雅というクラブが好きです。
この活動に携わらせてもらって早いもので今年で14年目になりました。
もしかしたらクラブというより、この活動に携わってくれている方たちへの愛着があるという言い方が正しいのかもしれません。
いつもアルウィンで試合を見ている時に思い返す光景があります。
それは初めてアルウィンに足を踏み入れた瞬間。
人のまばらなスタンド。
素晴らしいピッチとスタジアム。
このミスマッチのコントラストが鮮明で
ここが満員になったらどんなに素晴らしい雰囲気だろう…
そんな想いを抱いたのを覚えています。
そこから何年もたち、様々な場面に遭遇し、経験し、様々な選手やスタッフ、そしてサポーターの方々と接してきました。
そしてそれはこの活動に携わる全ての人にも1つずつ、その人にしかない歴史があると思います。
そのすべてが「物語」で、それは皆さんがこのクラブと関わった瞬間から始まっています。
自分自身の中に、やはり今まで携わってくれた選手やサポーター、関係してくれた方々へのリスペクトを忘れずにいたいという想いが根底にあります。
過去を大切にするということは、すなわち今の松本山雅を大切にしていく、ということに繋がると思うからです。
昨年の松本山雅が過去のものになっているのと同じで、今シーズンのチームも来年には過去のチームになっていきます。
今という時間は必ず過去に変わります。
生活環境が変わることもある。
その中で試合を見に来ることが出来なくなったり、少し松本山雅から離れてしまう、離れざるを得ない方もいると思います。
それでも、久しぶりに帰ってきても、いつでも同じ笑顔で「おかえり」と言えるような、そんなクラブで、松本山雅で在り続けたい。
その想いを具現化させたのが今回の阿部琢久哉のカムバックなのです。
彼について大きく印象に残っているシーンがあります。
2008年11月23日。
冷たい雨の中、レノファ山口FC戦でPKを外して立ち上がれないほどにうなだれている姿。
あれから約10年。
先週のレノファ山口FC戦では誰よりも元気に喫茶山雅ブースで必死に働く彼がいました。
悔しい思いを糧に這い上がってきた仲間だからこそ、また共に歩める事を本当に嬉しく思っています。
そしてこれからもそんな仲間が増えていくことを、そして皆さんとそんな『物語』を共有できることを楽しみに目の前の仕事に取り組んでいきたいと思います。
さぁ、明日はホームゲームですね。
こんなにも週末が待ち遠しい生活を出来ることに感謝して、明日も皆さんのご来場をお待ちしています。
喫茶山雅ブースにはもちろん、阿部琢久哉がいますので是非、会いに来てくださいね♪
ではまた。